たかがそうめん。されどそうめん

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珍しく自宅警備員が買い物に出る、という。
そしてお昼ご飯はそうめんにする、との由。

「ほう、もしかして
お父さんの分も茹でてくれるの?」

「いいよ、めんつゆ買ってくる」

そう言ってあっという間に出ていったので、
出陣のホラ貝は吹き忘れた。

気がつくと戻ってきていて、
早速キッチンにいる忍介。

「できたよ」

と2人分のそうめんを持ってきてくれた。

ただ、――見るからにアルデンテっぽい。

勇んで食べた15歳、
一口食べて「マズ!」と叫ぶ。

僕も食べてみた。
まあ、モッチモチのフェデリーニって感じ。
少なくともそうめんの食感じゃない。

傷心のシェフが敗因を分析する。

「やっぱ茹でるのが早かったかなあ」

「と言うと?」

「沸騰するかしないかくらいで
入れちゃったんだよね、そうめんを。
なんかちょっと待ちきれなくてさ」

「そっか。原因はそれだね」

「あー、たかがそうめん作るのも
ダメダメだよ。ヤんなっちゃう」

「そうか。嫌になっちゃうか…。
ちなみにさ、まだ残りあるんでしょ?
もう一回やってみるのは?」

「あ、そだね」

そして再チャレンジする15歳。

「おうら、確実に沸騰させたぞ!
喰らえ、そうめん!」

と鍋に向かって叫んでいたのが可愛かった。

再起のそうめん。
もちろん、これは美味しかった。

「やっぱさ、失敗って大事だよね」
と忍介が言う。

「大事だね」と僕が言う。

「もう忍介はこの先の人生、
絶対に沸騰前にそうめん入れないよね」

「入れないね、もう2度と。
こんなに味が変わるとは思わなかったよ」

そんなこんな、
2人してそうめんを食べた昼下がり。

川崎のフリースペースたまりば理事長の
西野博之さんの言葉を思い出した。

「安心して失敗することを
積み重ねることが大事」

そうだ。安心して失敗すればいい。
失敗を積み重ねることで成長できる。

たかがそうめん。されどそうめん。

そう思った。

今日も、良い1日を。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在19歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。