結果は100%、自分で引き受けるしかない

結果は100%、自分で引き受けるしかない

一万円もする参加費を払って、42kmを進んで走ろうというのは、世間一般から見たらかなり奇特で、理解の範疇外だということはよくわかる。

ぜんたい、フルマラソンを走ろうという人に「ドS」な人はいないと思う。
織田信長が歯を食いしばって37km地点を通過していく、という図は僕にはうまく想像できない。

マラソンについては色々言いたいことはあるけど、ひとつ言えるのは「うまく走れると最高だけど、うまく走れなかった時の敗北感は半端ない」ことだ。

 

走らない人にとっては、42.195kmを3時間27分で走ろうが3時間45分で走ろうが、たいした違いはないように見えるだろう。

マラソンの最高に面白くてクソつまらないところは、スタート地点に立った時点で95%くらい勝負が決まっていることだ。

まぐれや勝負のアヤは無い。

3ポイントシュートも満塁ホームランも何も無い。

左右の脚を交互に何万回も前に出して、自分の身体をフィニッシュラインに持っていくだけの、究極にシンプルな競技だ。
当日、体調が絶好調だからってタイムが15分や20分も早くなるのは(2回目や3回目に走る人ならもちろんあり得るけど)、少なくとも4時間を切るタイムの場合ほとんどないと思う。

 

要は事前の準備がほぼ全てで、つまるところは練習した量なのだ。
その練習も数週間ではなく、少なくとも3ヶ月、普通は半年くらいかけて準備する。

その半年間、日々の生活の中で、限られた時間をどれだけ走ることに確保出来るかがポイントだ。自分の生活全体をタイムマネジメントする必要がある訳で、そこが一番面白いところで醍醐味だ。

 

で、十分に準備をして、晴れてスタートラインに立つ。
あとはレースという場で、日頃の成果を目指すタイムに換金していくだけだ。

ただ、これがまた難しいところで—。
十分に準備をしたつもりであっても、予期せぬ事態が発生したりする。

 

先週日曜日の、静岡マラソン。
3月第1週には暑すぎる気温。3時間近くハイスピードで走り続けてきたため発汗が激しく、だんだん後頭部がすーっと寒々しくなって、脈打ち始める。考えることは次の給水所のことばかりになる。
暑い。苦しい。とにかく水分が欲しい。
脱水の危険を感じて、35kmすぎの給水所で初めて立ち止まって、スポーツドリンクをがぶ飲みする。頭から水をひっかぶる。

さあ、残り7km!
走り出そうとするも、突然誰かに電源コードごと引っこ抜かれたみたいに、身体がまったく動かない。
え? 何で???
無理に走ろうとしても、右脚が着地衝撃を受け止めることが出来ない。何度もストレッチするも、まったく力が入らない。走るどころか、歩くこともままならない。それまでずっと5kmを24分台で走ってきたのが、35kmから40kmまでの5kmに41分もかかってしまう。

結果、3時間45分というタイムでゴールする。
こういう時の敗北感は、半端ない。

 

全体から見れば6分の5は予定通り走ってきた。残りたった7km、でも一番大切なココをしっかり走り切ることが出来なかった。
タイムやラップなんて、他人からしたら意味のある数値じゃないかも知れない。でも走る身にはそれこそが重要で、走る理由だったのだ。

もう悔しくって悔しくって、あまりにも悔しくて目の前が真っ暗になる。

***

これってアレと似てるかも。

そんなこんなで思い出したのは、ある朝、忍介がしゃくりあげて泣いていたことで。

 

聞けば数日間、徹夜を重ねてたどり着いたゲームの最終ステージ。
明け方3時間かけて「ラスボス」に3回挑戦するも、無情にもことごとく跳ね返されてしまい、結局クリアできなかったとのこと。

過呼吸になりながら、悔しさのあまり何度もソファを拳で叩いて泣き濡れる13歳。
確かにゲームは完全に自分の技量の問題だから、誰のせいにすることもできない。その点はマラソンも同じで、結果は100%、自分で引き受けるしかない。

 

忍介が徹夜でゲームをしていることは、僕は心の中ではどうだかなあと思っているけど、

大切に大切に積み上げてきたものが報われず無情にも崩れ去ってしまう、目の前が真っ暗になるくらいの、その悔しさ。

涙にくれる忍介のことを思い出した。

悔しいよね、ホント。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子の忍介は書字の学習障害と軽度の発達障害があり、小学三年生の時に不登校になりました(現在通信制高校1年生・忍者好き)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』を出版しています。