玄関のスーツケース

 

 

朝起きる。
玄関にスーツケースが置いてある。

いやぁ。

人生は想像つかないこと、
本当に多いよなと。

たとえば?

1)タバコをやめたこと

20年間しみついた完全なる悪癖だった。
やめるなんて絶対無理だと思ってた。

2)マラソンを趣味にしてること

42kmという距離とニコチン中毒とは
ダビデと巨人ゴリアテくらい違うと思う。

3)会社員をやめたこと

会社やめたら生きていけないと思ってた。
ある意味、価値観のすべてだった。

4)自分たちで本を出版していること

夫婦二人で仕事をしていること。

「不登校でも大丈夫」

大きな声でそう言い回っていること。

そんな未来はまったく1ミリも
思い描くことさえできなかった。

でも現実に今、そうしてる。

話は冒頭に戻る。
玄関のスーツケースのことだ。

今日、息子は海外に旅立つ。

1ヶ月の短期留学ではあるけれど、
外国で過ごす経験をする。

12年前、小学3年生だった彼が
学校に行けなくなったとき――。

やっぱりこんな未来は描けなかった。

本当に不思議な気分だ。

別に大学行ったらと言った訳じゃない。
別に留学がいいよと勧めた訳じゃない。

「不登校を受け入れよう」

そう決めてからは極力、親としての
意見やアドバイスはしないようにしてきた。

意識して選択は常に彼に任せてきた。

結果、どうなったか?

見事な昼夜逆転の自宅警備員にして
ひきこもりゲーマーが爆誕した。笑

まあ、そりゃそうだ。

でもそれについてもあれこれ言わなかった。
彼が自分で選んでそうしているんだから。

とにかく丸ごと受け入れる。

親があれこれ仕向けない。
親は親、子どもは子どもの人生なのだと。

そしてあの陰鬱なコロナの数年を経て、
通信制高校を卒業して、
晴れて無所属新人として家で過ごしていて。

「塾に行きたい。大学を受験したいから」

そう言い出したのはちょうど
今から2年前の夏のことだった。

ついほんの昨日のことのようだ。

そこからの急な展開はあまり詳しく
このブログでは触れてこなかったけれども。

玄関の現実のスーツケースを見ると、
改めて「本当に行くんだなあ」と思う。

僕が彼と同じ二十歳のころ、
一人旅といえば原付バイクで
伊豆半島をぐるっと回ったくらいだった。

「留学」なんて考えもしなかった。

「嬉しいか?」

いやいや、何をおっしゃいますか。

やっぱり心配ですよ。
こう見えて僕も親だもの。

あ、噂をすれば起きてきた。おはよう。

「パスポートだけは忘れるなよ」

と言いかけたけどやめた。

初めて一人で海外に行く身として今、
言われて一番ウザいはずの言葉だから。笑

自問:
どうして親っていう奴はいつもこういう
言っても無駄なこと言いたがるんだろう?

行ってらっしゃい。気をつけて。
あと、まめにLINEくれよ。

と、念ずるにとどめておくことにする。

以上、旅立ちの日の親バカ日記なんでした。

今日も良い1日を。

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2 件のコメント

  • いつもながら味わい深い文章でした
    今の瞬間を生きているし、長い人生のいろいろな時間もまた今ここにありますね。

    • 田中先生、いつもありがとうございます。
      10年のタームで思い返すと本当にしみじみしちゃいます。なんかそんな朝でした。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在20歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。