ドン詰まりの孤立ではなく

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多分、明け方に今日も早起きしたのだろう。

朝起きると忍介がリビングにいて、
ゲームをしながら話しかけてくる。

「ねえ、よく少年ジャンプとかでさ、
昨日の敵は今日の友、みたいな話って
出てくるじゃん?」と忍介。

「ああ、あるね」と僕。

「そういうのって、ホント
信じられないなあって思うんだよ」

「なんか、あった?」

クズな奴の酷い裏切り

「今もゲームでさ、仲間を売る奴がいてさ、
メッチャむかつく裏切りをしてくるわけよ。

絶対許さん!二度と立ち直れなくしてやる!
って全力で踏み潰してやったんだけどさ、

僕はそういうことをする奴とは
何があっても仲間にはなれないんだよね。
ジャンプの主人公たちと違って」

「今、ゲームの向こうで繋がってる
誰かから、酷い裏切りにあったんだ」

「そう。クズな奴っているよね、ホント」

それがどれくらいのことなのか、
僕には分からない。
でも彼がそれだけプリプリするには
きっと相当に酷い裏切りなんだろう。

忍介は家から全く出ない生活を続けている。

そしてゲームはあくまでバーチャルな場だ。

けれど、そういう
「社会のリアルな一面」も知れるのは
いいことなんじゃないのかな?

ふと、歓楽街に近い大学では自殺が少ない
という、この記事を思い出した。

いろんな生き方があるのを見る

精神科医の松本俊彦さんは
「大人は武勇伝を語るな」と言う。

「辛かったけど一念発起して
頑張って、結果、こうして成功した」

そういう武勇伝なんかよりも、
子どもは失敗談に目を光らせている、と。

ずっこけた話、失敗した話。

今はダメでも人生には色んな選択肢がある、
そう思わせてくれるような話の方がいい。

古くからよく言われていることで、
街中にある大学が郊外の学園都市みたいな
場所に移転すると、自殺が増えるという。

そういう環境でドン詰まると
本当に孤立してしまうのだ。

自殺が少ない学校の特徴は、周りに歓楽街とか雀荘とかね、もう、学業から逸脱するのに便利な場所がたくさんあるんですよ。飲み屋でバイトしている友達がいたり。でも、そこで若者たちが見るのは、いろんな生き方があるってことなんだと思うんですよね。「多様な選択肢がある」っていうこと。それが、ドン詰まってる人たちにとって、逃げ道になる。

孤立ではなく、擬似歓楽街であれば

ひるがえって、我が家のおこもり王子。

ほぼ一年以上、家から出ない日常だ。

正直、普通の高校一年生に比べれば
人間関係は多彩な方じゃないと思う。

ただあくまでも彼なりにだけど、
ゲームの中で今、色んな人に触れている。

顔も名前も知らない、画面の向こうの誰か。

だからこそ、むき出しの損得勘定で
日々やりとりしている。

いろんな奴がいる。
いい奴も、やな奴も。

その中で強盗したり、麻薬を密売したり、
稼いだお金で自分の会社を経営したり。

そんな諸々が、彼にとって
ドン詰まりの孤立ではなく、
にぎやかな擬似歓楽街であればなあ、と。

父としては願うばかり。

今日も、良い1日を。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子の忍介は書字の学習障害と軽度の発達障害があり、小学三年生の時に不登校になりました(現在通信制高校1年生・忍者好き)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』を出版しています。