自分の住所が書けない…ディスグラフィア(書字障害)のこと

自分の住所が書けないこと

忍介が下痢っピになってスノボ旅行から帰ってきた。

友達が一緒なのと食事がバイキングなのに浮かれて、暴飲暴食を繰り返したツケが出たらしい。

土曜日から何を食べても下ってしまうそうで、昨日はスクールを休んだ。

問診票を、代わりに書く

お医者さんに見てもらって、きちんとした薬をもらおう。

忍介がこれまでお世話になってきたのは、近所の小児科だ。でもバブちゃんや可愛いチャに混じって診察されるのは13歳としてさすがにどうかと思ったので、僕が普段行っている大人向けの駅前のクリニックに午前中に連れて行った。

保険証を出して、問診票を記入する。

忍介、名前と生年月日は自分でなんとか書けたけど(しっかし筆順のフリーダムさには度肝を抜かれた)、

住所は「漢字が苦手なんだよね」、

電話番号は「覚えてないなあ」とパスをした。

なので、僕がかわりに書いた。

「名前と生年月日と住所・電話番号のセットは、この先も色んなところで書かされることが多いから、覚えておいた方がいいぜ」

忍介「うん」と言ったけど、だからって僕が書いたものを見て、覚えようとするそぶりも一向になくて。

微妙な気持ちで窓口に問診票を出した。

 

忍介のディスグラフィア(書字障害)はもちろん理解していたけど、それでもこうして実際に自分の住所を全く書けないのを目の前にすると、やっぱり心はざわついてしまう。

 

なんとか住所くらいは、書けるようになって欲しい。

この先、色んなところで書かされる機会が多いと思うから。

比喩はユニークだし、伝える言葉にまったく問題はないのだけど

待合室で待つ間、忍介が下痢っピの辛さを切々と話す。

なんかね、ぼくの身体はコンビニの袋なんだよ。

手でなんとか袋を縛ろうとしてるんだけど、食べたもの全部水になって、あふれてしまうんだよ。

もう縛っても縛ってもダメで、水がどんどんこぼれてくるから、ああ、いつまでこれが続くんだよ!って思っちゃうんだよね。

起きてる間よりも、寝てる間の方が心配なんだよ。

縛れないから、うっかりおもらししちゃいそうで怖いんだよ。

忍介の比喩はいつもユニークで、ちょっと変わっている。

こうして文字にすると奇妙な感じだけど、彼が話すと不思議とニュアンスがよく伝わってくる。

今回に限らず、いつも彼は何かを説明するときに、必ず独特の比喩を駆使する。

 

知能に問題があるとか、そんなんじゃない。

 

けど、自分の住所が書けないと、多分それだけで

「この人、大丈夫?」

って人には思われちゃうんだろうな、というのが残念で。

悔しくて。

 

もちろん、それは彼の問題であって、僕の問題じゃない。

分かってはいるけど、

それはよく分かっているけど、

やっぱりどうしても心配だ。

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1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在19歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。