母親をクソババァと呼び、殴り蹴り、
障子や襖を破り、部屋に唾を吐く。
両親はそんな息子を精神病院に連れて行く。
神社のお札を与え、催眠術にまですがる。
なぜか?
ただただ、息子を学校に行かせたいから。
登校拒否、と呼ばれたこの時代。
小学校5年生から親や先生、学校と
5年間に渡って戦い続けた。
堂野博之さんの詩画集
『あかね色の空を見たよ』を読んだ。
特に前半の苦しい胸の内を描いた詩と絵。
不登校の子の気持ちが凄まじく
リアルに描かれていると思った。
ただ個人的には、この本の中で
一番印象に残ったのは次の一節だった。
中学校を卒業して、堂野さんが
定時制高校に行くことを決めた日の話だ。
いったい私たちは何と戦っていたのだろうか。卒業という形にせよ、とにかく義務教育から解放された瞬間、大きな肩の荷を降ろすかのように、家族の間に安らかな空気が流れていました。そして私も、やっと終わったんだという安堵感に、いままでかたくなに閉ざしていた心が少しずつ開いていくのがわかるような気がしたのです。
なぜ、いままでの五年間に家族がこのようになれなかったのか――。私は何も変わっていない。ただ違うのは、行かなくてはならない学校という存在が今はないだけ。行かせなくてはならない学校というものや世間体というやっかいな見えない力から、解放されただけ。ただそれだけで、平和な家庭がここに戻ってきたのです。
壮絶な前半の親子の戦い、
学校の先生との戦いを読んできた。
それだけに、本当に
何とも言えない気持ちになった。
登校拒否。不登校。
いったい我々は何と戦っているんだろう?
あとがきの堂野さんの言葉も良かった。
もし学校や先生たちが、不登校が増えることを問題だと思い、学校に来させることを目標にしているのなら、もっと学校の在り方というものを考え直さなければいけないと思います。ただ学校に来られるように生徒の心を動かそうとしても、だめです。もし学校の在り方を変えるわけにはいかないと思っているのなら、そおっとしておいてください。
ちなみに堂野さんは僕より
ひとつ学年が上の人で、
この本の初版は1998年発行だ。
でも、全然古びてないと思った。
それだけ状況が改善されていない、
ということでもある訳だけど……。
定時制高校の卒業祝賀会。
堂野さんが両親に向かって
「最後のくそじじぃ、くそばばぁ」
を言うシーンでは涙がこぼれた。
涙がこぼれない人はいないと思う。
親にこそ読んでほしい。
そんな一冊だと思った。
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