漢字のない国に行きたい
読めるけど、書くのが苦手…。
忍介には書字の障害がある。
まったく書けない訳じゃない。
でも書けば筆圧の弱いミミズ文字。
書くことに困難がある学習障害、
ディスグラフィアだ。
5年前、小学校三年生で不登校になった後、
調べてもらって分かった。
学校へ行くのが嫌だ、
漢字のない国に行きたい、と言った忍介。
だから彼は漢字が苦手なんだ、と
なんとなく、そして今までずっと
そう思っていた。
ところが。
今朝起きたら忍介が居間で
ゲームをやっている。徹夜したらしい。
やっているのは隻狼という、
彼が今夢中になっているゲーム。
先日はそのゲームを買うために
久々に外出もした。
1周目はすでにクリアし終わっていて、
今朝は2周目のラスボスに挑むところ。
そんな説明の後、ふと彼が言う。
「お父さん、
基本的には”フンヌ”って言うけど、
”フンド”とも言うんだよ」
「憤怒、つまり
すごく怒っていることを言ってる?」
「そう」
「いや、その読み方は
フンドじゃなくてフンヌだよ」
「どっちでもいいんだよ」
そんなことってある?
初耳だった。
なので検索した。辞書も引いた。
結果、、、
どっちでもいいらしい。
ご存知でしたか?
なんでそんなことを知っているのか
忍介に尋ねると、ゲームの中で
そういう類の字がいっぱい出てくるらしい。
怨嗟(えんさ)の鬼
寄鷹(よだか)斬り
葦名城(あしなじょう)
そういう中で憤怒のことも知った、と。
なるほどね。
確かに画数が多かったり、
読み方に迷うような漢字だらけだ。
冷静なトドメ
学校に行きたくない。
漢字のない国に行きたい。
その図が記憶に焼き付いている身としては、
遠い目をしてみたくもなった。
書くのが苦手なだけで、読むのは問題ない。
漢字が苦手、は僕の単なる思い込みで、
むしろ漢字のことを結構よく知っている。
そのことに改めて気づかされた。
それにしても、、、
フンド、ねえ…。
しかし気持ち悪い読み方だなあ、これ。
そう呟くと、
忍介に冷静にトドメを刺された。
「自分の知識だけが正解じゃない、
ってことだよね」
まったく、ぐうの音も出ない。
そんな雨の朝六時だった。
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