茜色に焼かれる

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7年前、交通事故で夫を亡くした。

相手は高齢で、ブレーキとアクセルを
踏み間違えたのだという。
アルツハイマーの症状もあって、
逮捕すらされなかった。

謝罪の一言もなかった。

ただただ事務的に賠償金の話をされた。
そんなお金はいらないと断った。

施設に入院した義父の面倒も見ながら、
中学生の息子・純平を育てている。

経営していたカフェはコロナ禍で破綻。

家計のために花屋のバイトの他に、
風俗の仕事も掛け持ちしている。
純平はそのせいでいじめにあう――。

映画「茜色に焼かれる」で、
尾野真千子さん演じる田中良子の話だ。

公開前夜上映会で尾野さんが
「命懸けで撮った映画、ぜひ劇場で観て」
と涙ながらに話した、という記事を読んだ。

尾野真千子は、僕がはっきり
「好き」と言える数少ない女優の1人だ。

彼女がそこまで言うのなら、
観ないわけにはいかないじゃんね!

ということで昨日、一人で観てきた。

「まぁ、がんばりましょう」

ことあるごとにそう口にしてきた良子。

その「まぁ、がんばりましょう」という
口癖の意味がどんどん深まっていく。

不条理と理不尽なことばかり。
心の底まで文字通りボロボロだ。

なのに、なんで生きるのか?
それでも生きる意味なんてあるのか?

この映画に出てくる男たちは、
ことごとくクズ野郎だ。

その清々しいまでのクズっぷりが
また薄ら寒くなるくらいリアルで、
本当に暗澹たる気持ちになる。

救いは――残念ながら、ない。

そんなに簡単にこの傷も痛みも
癒えるものなんかじゃない。

でもいろいろあって、
本当にいろいろありすぎて
思い切り端折るのだけど、
良子は怒ることができた。

それはそれは、物凄い怒りだった。
それまでの押し殺していた経緯も含めて
尾野真千子、流石の役者さんだった。

そして夕焼けに染まる土手の上を
母と子が自転車を二人乗りするシーン。

いつまで経っても、
安らぎの夜はやって来ない。

ずっと茜色に焼かれたままだ。

それでも二人、明日へと漕ぎ出していく。

2時間半、散々二人とともに
怒りと哀しみを共有してきた分、
それがぜんぜん安っぽくなかった。

ラストの良子の「神様」と題した
一人芝居を見ての、息子の純平の感想。

「芝居の意味は正直、
よくわからなかったけど、
これが僕の自慢の母ちゃんだ」

このモノローグとともに、画面が暗転して
エンドロールとGOING UNDER GROUNDの
「ハートビート」が勢いよく流れ出す。

ここで潮が満ちるみたいに涙が滲み出た。
静かなカタルシスだった。

とりとめなくダラダラしてしまったけど、
感じたことをそのまま書いてみた。

ご興味湧いた方、もしいればぜひ。

今日も良い1日を。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子の忍介は書字の学習障害と軽度の発達障害があり、小学三年生の時に不登校になりました(現在19歳・忍者好き)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。