「残りあと4キロ!」
と沿道に大きなお手製のボードをかかげたおじさんが見えた。
バネがなくなっているとはいえ、まだ1キロ5分を切るペースで走れている。1キロあたり4分50秒から55秒といったところだろうか?
残りはあと4キロ。この先1キロをジャスト5分で走ったとして20分。対して手元の時計はまだ3時間8分台を指していた。
いける。いけるじゃないか!
気持ちの問題なんだ、と思う。確かにキツい。今のペースはキープするのもいっぱいいっぱいだ。でもこのまま踏ん張り通せば、サブ3.5(3時間30分切り)はまだ可能なんだ。現実の話なんだ。ここで粘らなきゃウソだろう?
残り少ない力を総動員して、崩れ落ちなんとするペースをなんとかキープする。この苦しさもあと20分だと思うと、気持ちも高ぶる。
と、次の瞬間。目に入ったのははるか遠くにかかげられた「38キロ」の公式距離表示だった。
えっ???
さっき「残りあと4キロ」だと。その時点で3時間8分台だったから、計算上ではサブ3.5は可能だって……。
無責任な沿道のおっさんのいい加減なお手製ボードのせいで、皮算用がもろくも崩れ去る。混乱したまま、気がつけば38キロを通過してしまっていた。肝心なときに時計を見るのを忘れてしまったせいで、正確な38キロの通過タイムは不明。もう何がなんだかよくわからない。
落ち着け。机上の計算はもういい。
とにかく今のペースで走り続けて、ゴールに飛び込む他はない。それだけでいい。ただし、これ以上は1秒も落とせない。1秒たりとも、だ!
そう思ったとき、右ふくらはぎに痙攣の予感が走る。
たまらず、いったんペースを落とす。
こんなところで脚をつってる場合じゃないんだ。路肩に寄ってストレッチする。今度は逆に左脚の股関節がつりそうになった。
ああ、もう1秒だって無駄にできないというのに!
急いで応急処置のストレッチを繰り返す。時計は無情にときを刻んでいく。容赦なく残り時間を削り取っていく。
ゴールまであと残り4キロ弱。
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今日も良い一日を。
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