神保町へ行く用事があった。
用事を済ませた後、前から行ってみたかった
神保町ブックセンターへ初めて行ってみた。
本が読めて買える喫茶店、
ということなんだけど
壁一面の岩波文庫は見るだけで嬉しくなる。
思わず買ってしまったのは
「ロバート・キャパ写真集」
(なんと岩波文庫の写真集なのだ!)と、
中勘助の「銀の匙」だ。
ユニークだった国語の授業
「銀の匙」は実に30年以上前に
中学一年の国語の授業で読んで以来だ。
国語の授業はとてもユニークだった。
教科書を使った記憶がほとんどない。
国語の竹辺先生は
「なにはなくとも本を読め」
という人だった。
忘れもしない、
入学して最初の国語の授業は
鈴木隆の「けんかえれじい」という小説が
いかに面白いか、
先生が熱弁を振るうものだった。
僕が人生で初めて文庫本を買ったのは
この「けんかえれじい」だった。
生意気盛りの中学生には
「いかにして喧嘩に強くなるか」
を面白おかしく教えてくれる
この小説は抜群に面白かった。
以降、竹辺先生の授業を
心待ちにするようになった。
毎回、古今の名作のハイライトを抜粋した
プリントが配られ、先生の推薦を
聞くのが国語の授業だった気がする。
テストはあった。
シンプルに百人一首の暗唱だった。
百人一首もやるけどそれよりも断然、
先生は名作小説の推薦の方に熱心だった。
銀の匙を輪読する
そして三学期は「銀の匙」の輪読だった。
全員が岩波文庫を買わされて、
出席番号順に章を割り当てられた。
そして順番に朗読を担当する。
朗読には竹辺先生の点数がつけられた。
僕が割り当てられたのは15章だった。
毎日何度も何度も音読して練習した。
その甲斐あって十点満点の九点をもらえた。
九点を取ったのは僕が学年で初めてだった。
すごく嬉しかった。
ちょうど「新潮文庫の100冊」が
始まった頃だった。
それを全部読もうと思った。
そして大半は読んだと思う。
学校に行って一番良かったと思うこと
僕にとってそれは、竹辺先生に出会って
本を読むようになったことだ。
多感な十代の頃に本を読み漁ったのは、
今でも本当に良かったと思う。
ただ、嫌だったこともある。
竹辺先生には体罰の癖があった。
百人一首を言い間違えたりすると
「ん?今なんて言ったかな?」
なんて言いながら、
硬い厚紙の出席簿の角で
人の頭をこんこんこんと
突っつくように叩くのだ。
これが、結構痛い。
中学3年になると竹辺先生は
学校からいなくなってしまったので、
それ以降はお会いしていない。
体罰は良くない。
あれを食らうのは本当に嫌だった。
ただ、先生に教えてもらった本のことや、
輪読の授業のことは忘れない。
学校へ行くことの良いところ
神保町ブックセンターで
壁一面の本を見ながらサバライスを食べ、
「銀の匙」をパラパラめくっていると
そんなこんなを思い出した。
今にして思うのだけど、
「銀の匙」というチョイスはすごくいい。
中学一年生にはもったいない、
本当に素敵な、胸があったかくなる、
静かな良い小説だ。
なんかいつも僕は学校について
悪口ばかり言っているように
思われているかも知れないけど、
その後の人生を変えるような
先生との出会いというのは、
学校へ行くことのひとつの良い点だと思う。
とはいえ—。
最近の先生たちは超絶忙しいと聞くし、
竹辺先生みたいな文科省の学習指導要領
どこ吹く風の授業をするのは、
多分もう許されないんだろうけど。
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