本当は僕も刀が欲しかった

本当は僕も刀が欲しかった

子どもの頃、刀が欲しかった。

でも僕は買ってもらえなかった。

父が銃も刀も人を殺す道具だから、と。

当たって痛くも痒くもない、銀玉鉄砲でさえダメだった。

父も子どもの頃、祖父からそう言われて育ったらしかった。

そういう次第で、おもちゃでも「武器」は一切買ってもらえなかった。

でもチャンバラしたい。なので、新聞紙を固く丸め、セロテープでコーティングしたお手製の刀でチャンバラをした。

新聞の刀は作りが甘いとフニャフニャになってしまうんだけど、しっかり固く巻けば、おもちゃの刀なんかより強く戦うことができた。

おもちゃの刀が無かった分、僕の新聞紙刀は固く、作りは精巧になった。

***

そして30年近い時が流れて。

初めて忍者村に行った時、息子が忍者の手裏剣と刀を欲しがった。

当然僕はダメと言った。

それはもう何と言うか、うちの伝統なのだ。

 

でも忍介はそんなことでは納得しなかった。

どうしても欲しい!忍者になりたい。手裏剣と刀がないのは忍者じゃない、と。

 

で、何度かダメだと押し問答をしているうち、僕自身よくわからなくなってきた。

じゃあ、何ならいいのか?

殺傷力が低い手裏剣ならいいのか?

敵を妨害するためのマキビシなら問題ないのか?

仮面ライダーの変身ベルトは、あれもある意味では武器じゃないのか?

武器は本当におもちゃでも絶対にダメか?

どうして?

人と戦うこと自体がダメなのか?

チャンバラだって、言葉は可愛いけど殺し合いの真似っこじゃないか。

そんな風に、突き詰めて考えるとよくわからなくなった。

 

僕は父がそう言うから、そう思っていた。

たとえおもちゃであっても、子どもは人様を殺す道具を手にしてはいけない、と。

でも白状すると、深く思うところがあってのことじゃなかった。

そうしてしぶしぶながら、買い与えた。

 

一度許してしまえば、次に禁じる理由も無くなって、その後、忍者村に行く都度、我が家に刀は増え続けた。

気がつけば、忍介の部屋は刀狩りの集積所のようになっていた。

***

思えば、僕も刀が欲しかった。

僕は忍介みたいに、何度ダメと言われようともメゲずに全身全霊でどうしても欲しい!と、親にアピールすることができなかった。

でも本当は僕も刀が欲しかった。

 

今はもう、さすがに忍介とチャンバラごっこをすることもなくなった。

大量の刀も処分された。

 

13歳の今、彼は「オーバーウォッチ」という対戦型のゲームをしている。

そこでも彼が使うのは忍者で、ゲームの中で手裏剣を投げている。

その「ゲンジ」というキャラは、マシンガンやなんかを使う他のキャラと比べるとあまり強くないみたいだけど、(第一、マシンガンに比べて手裏剣は武器としての威力が弱すぎる)

「ああゲンジ、弱すぎだよ。もうっ!」

忍介、画面に向かってボヤきつつ、

それでも「ゲンジ」を使うのをやめようとしない。

やっぱり忍者が好きみたいだ。

今でも。笑

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子の忍介は書字の学習障害と軽度の発達障害があり、小学三年生の時に不登校になりました(現在通信制高校1年生・忍者好き)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』を出版しています。