メリイクリスマス

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昨日、夫婦で取材に出かけて、
帰りに蔦屋書店 湘南T-SITEに寄った。

帰りの車中、うちの奥さんが
「ねえ、これ知ってた?」
とハガキサイズの小さなPP袋に
入ったものを見せてくれる。

文鳥文庫というもので、
短編小説が蛇腹折りで小袋に入っている。

とても洒落た雰囲気だ。
http://bunchobunko.shop-pro.jp/

その文鳥文庫。

彼女は湘南T-SITEで太宰治の
『メリイクリスマス』を買ったらしい。
値段、150円ナリ。

太宰治のこの短編、読んだことある?
と聞かれて、記憶を辿ったんだけど――。

御多分に洩れず中学二年生の頃、
太宰はほとんど全部読んだ。
でも、そのタイトルには覚えがなかった。

そう答えると、夕方の渋滞した車中、
うちの奥さんが朗読してくれた。
12ページの短編。
たぶん読むのに15分もかからない。

とっても良かった。

こう言ってはなんだけど、
ほら、太宰治って、思春期ならいざ知らず。

なんと言うか、
もうお腹いっぱいじゃないですか。
完全に決めつけで言ってるんだけど。笑

ところがこの短編は、
なんとも言えない読後感があって、
すごく良かった。

冒頭、知人の娘と偶然本屋で再会する場面。

ふと入口のほうを見ると、若い女のひとが、鳥の飛び立つ一瞬前のような感じで立って私を見ていた。口を小さくあけているが、まだ言葉を発しない。

この表現は、すごいなあと思った。
ホント、目に浮かぶようだ。

そしてすました顔して、
コメディータッチで畳み掛けてくる。

恋愛に阿呆感は禁物である。

恋愛に滑稽感は禁物である。

このあたりのユーモアは、
嫌味なく楽しかった。そして、、、

嫉妬でも、恋でも無かった。

という一文からラストにかけての
「転調」の感じも実にいい。

ここからはユーモアも心の声もなし。
淡々と事実を描写する。

そしてラストのコレ。

東京は相変わらず。以前と少しも変わらない。

まだ年の瀬には少し早いけど、
その一言が沁みる渋滞の夕暮れ時だった。
たぶん、この良さは
中学二年生だったらわからなかった。

もしご興味あれば(こちらで全文読めます)。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/295_20170.html

文鳥文庫がとっても素敵なので、
本当はそちらで読むのが
オススメではありますが、、、

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在19歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。