荒井先生がひきこもっている不登校生の
部屋を訪ねるのは、決まって夜の7時頃だ。
時間は早すぎても遅すぎてもいけない。
必ず部屋に入って、座るようにしている。
お菓子とジュースを持参する。
その子の興味のあることを質問してみる。
そして時間は長すぎないように、
さっと切り上げる。決して無理はしない。
もちろん、部屋に入ること自体が
できないときもある。
家族に対して暴力を振るっている子。
たとえ部屋に入れたとしても、
布団をかぶってまったく反応しない子。
それでも荒井先生は
そういう子の部屋を辛抱強く訪ね続ける。
5回、10回、15回……。
部屋のカーテンは締め切られ、
布団は敷きっぱなし。
ゲームのソフトが散乱する部屋。
「また来たよ」
そう声をかけて、持参した
お菓子とジュースを廊下に置いて帰る。
その少年はいつも荒井先生が来ても
布団にもぐったままだった。
いつものようにお菓子を置いて
帰ろうとすると、布団の中から
ふるえるような声が聞こえてきたという。
「あ・り・が・と・う……」
それは初めて聞く少年の声だった――。
さくら国際高等学校学園長、荒井裕司さんの
『ひきこもり・不登校からの自立』を読んだ。
ひきこもる少年少女の部屋に、
焦らず長く辛抱強く通い続ける荒井先生の姿に
ものすごく勇気付けられる思いがした。
荒井裕司先生は私塾を運営する中で、
思春期の子どもたちが抱える困難に出会い、
フリースクール開設を経て通信制高校を設立、
これまで文字通り何十年も
数千人の子たちに寄り添い続けてきた方だ。
「玄関の先には道がなかった」
そうやって部屋にひきこもり、口を閉ざす
数多くの子どもの成長を見届けてきた。
だからこそ。
「学校に行かない生き方もある」
という荒井先生のシンプルな言葉には
正真正銘の説得力があると思った。
考えさせられるエピソードも多かったけど、
なんせ僕はいつも「親の立場」だ。笑
本の最後にあった「ひきこもり、
不登校の子どもを持つ親への十ヶ条」。
「第四条 あふれる愛情を持って接する、でも心に余裕と距離をおいて」
もその通りだと思ったけど、
やっぱり最後の第十条だと思った。
「第十条 信じること、信じ合うこと、あきらめないこと」
絶対に信じてやること。あきらめないこと。どんなにつらく、苦しい状況でも必ず道は開ける。子どもたちは自分で立ち直りたいと考えている。子どもたちは必ず自立できる。
ここだけ読むと、もしかしたら
「ちょっと楽観的なおまじない」
みたいに読めちゃうかもしれない。
でもさっきも書いたけど、
やっぱりね、
何十年も何千人の子どもたちと
体当たりで向き合ってきた
荒井先生がそう仰っているのだ。
決して簡単なことではないし、
時間もかかる。
「行きつ戻りつ」がデフォルトだ。
でも朝の来ない夜はない。そう信じたい。
改めて強くそう思えた1冊だった。
今日も良い1日を。
P.S.
びーんずネットの次回オンラインセミナーのゲストはなんと!
この本の著者・さくら国際高等学校学園長の荒井裕司先生です。
詳細はまた追ってお知らせしますが、8月28日開催予定です。
お楽しみに!
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