多分、明け方に早起きしたのだろう。
朝起きると忍介がリビングにいて、
ゲームをしながらサイドテーブルに乗せた
iPadを横目で見ている。
見ると、iPadで開いているのは
古文の教科書だ。
へえ。遂に「お勉強」してるのか。
まあ、ああ見えて一応、高校一年生だしね。
「おはよう。何読んでるの?」
聞くと、伊勢物語だという。
「お父さん、伊勢物語読んだことある?」
「んー、ないかな。どんな話だっけ?」
「昔あるところに男がいてさ、
好きな女の子が結婚しちゃったんだよね。
でも忘れられなくて切ねー、って話」
「ふうん…って忍介、古文読めてるの?」
「いや、まあ、全部訳を読んでるからさ。
それにしても、なんで昔ってさ、
ナリニケリとか言っちゃってんの?」
「そういうもんだったんだよ。
昔の人が文字に書く場合にはさ」
そう答えたんだけど、
なぜ書き言葉はそうだったんだろう?
シンプルな質問は時に深くて答えられない。
にしても――。
さわやかな朝日がのぼる午前5時30分。
「おうら、制圧したぞ!手を挙げろゴラァ」
突然忍介が画面に向かってドヤ顔で言う。
見ると例によって例のごとく、
飽きずにこれまた銀行強盗をしている。
なんともはや、滅茶苦茶シュールな図だ。笑
- 板書をノートに書き写す
- 古文は未然形だの連用形だの暗唱
そんな昭和世代の常識は、忍介にはない。
iPadで教科書開いて、ゲームで銀行強盗だ。
ゴールデンウィークもどこ吹く風。
おこもり王子は文字通り一歩も外に出ない。
まさにコロナ時代の超優等生。
そして画面の中のカリフォルニアを
バイクで疾走する。
予想通り、それ以降は一向に
古文に戻る気配はなかった、
…のであった。笑
そっちの方が平和かもね。彼の場合は。
今日も良い1日を。
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