15歳。高校一年生。
当時の僕は完全に行き詰まっていた。
中高一貫校にいたから
高校受験の消耗とは完全に無縁だった。
ただ成績は文字通りどん底だった。
文学少年だった。
当時盛り上がっていた新潮文庫の
インテリゲンちゃん100冊を読みまくった。
トルストイ、太宰治、ドストエフスキー、
サリンジャー、堀辰雄、シェイクスピア、
ヘミングウェイ、遠藤周作、チェーホフ、
フィッツジェラルド、芥川龍之介……。
古典名作を読むことだけが正義だった。
中二病全開だった。
だから都合の悪い現実、
つまり成績どん底に自分で蓋をした。
今思えば要するに何周もぐるぐる回って
完全に八方塞がりだった。
そして逃げ場を探して、探して探した挙句
プレグレッシブ・ロックにずっぱまった。
難解で複雑な変拍子と、長大な構成。
キザで大仰なクラシック趣味。
でもプログレはさすがに
バブル全盛の80年代後半では死語だった。
ただ、同じ学年で一人だけ、
僕と同じ趣味の奇特な変人がいた。
特待生の高野だった。
父親は東京大学卒の官僚。
母親は東京女子大学卒の主婦。
なぜそんなこと知っていたかと言うと
彼の母親が「学年通信」みたいな
学校関係の媒体になんとも積極的に
よく投稿をしていたからだ。
要するにちょっと変わったお母さんだった。
学校帰りの土曜日の午後。
「俺の家に遊びに来いよ」
と高野が僕を誘ってくれた。
僕らはふたり、部屋で何時間も
高野のかけるレコードを聞き、
変拍子のひねくれたリズムと
倒錯したエクスタシーの中にいた。
キング・クリムゾン、イエス、
エマーソン・レイク&パーマー、
ユーライア・ヒープ、
ステイタス・クォー……などなど。
まあ、なかなかに暗い青春だったな。笑
そろそろ帰ろうかと腰を上げたそのとき。
「かねこくん、ご飯ご一緒にどうかしら?」
例の東京女子大卒の高野の母親が言う。
高野は明白にそっぽを向いている。
迷ったけど、せっかくだから
ご馳走になることにした。
でもすぐに後悔することになった。
高野は母親がいるとまったく口をきかない。
そのまま、僕ら3人の夕食のその席は
かなり気まずいものになった。
ただ高野の母親はそのことは
特に気にしていないみたいだった。
覚えているのは、高野の母親が僕に語った
こんな話のことだった。
「かねこくん、今日ね、わたし
すごく面白い歌をラジオで聴いたの。
“ドブネズミみたいに綺麗になりたい”
そう真剣に歌う人たちの歌を聞いたの。
決して上手な歌じゃない。
むしろどちらかというと下手だった。
でもとっても心に響くものがあったの」
言うまでもなく、それはブルーハーツの
「リンダ リンダ」のことだ。
高野は相変わらずまったくの無表情だった。
意識して表情を消していたのかも知れない。
僕がなんと応じたのかも覚えていない。
ただ一個だけ思ったことがある。
帰り道、ブルーハーツのこの歌のことが
僕は無性に誇らしかった。
それは「完全なる勝利」だった。
なんの勝利か?
「ロックンロールの勝利だ」
ロックンロールばんざい!
ちなみに――。
高野は僕らの大方の予想を裏切って、
天下の東京大学には進学しなかった。
現役で京都大学に行ったと聞いた。
なんとなくだけど、それは彼のあえての
「心意気」だったような気がしている。
ドブネズミみたいに美しくなりたい
写真には写らない美しさがあるから♪
以上、なんか突然
思い出話を書いてみたくて
そのまま書いてみました。
今日も良い一日を。
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