ゾーンが心の鎮痛薬

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もうかれこれ10年以上も前のことだけど。

出張でラスベガスに行ったとき。
同行者もなく、自分一人で気楽でもあった。

展示会を見終わったら
早々に報告書を書き上げて、
さっそくカジノでスロットをやった。

ただし、もう息子も生まれていたし、
独身時代と違って小遣い制でもあった。

3万円も負けるともう、出張手当を
差し引いてもその月の生活に差し障った。
だから残念ながらそれ以上、小市民は
スロットには近づけなかった。

かくして僕の損失は慎ましく済んだけど、
海外出張の非日常感のことでもあって。

正直に言うと、日常的に
賭け事をする人の気持ちは、
よく分かっていなかった。

負けるに決まっているのを知ってて、
なぜそこまでお金を突っ込むの、と。

なので、この記事はすごく納得した。

冷静に考えれば、賭け事は絶対に損をする。
還元率だの胴元だのを思えばすぐわかる。

それでもなぜ人はハマってしまうのか?

以下、引用する。

「人からは理解されないんですが、私は勝とうとしてスロットマシンをプレイしてるんじゃないんですよ。プレイしつづけるため…ほかの一切がどうでもよくなるハマった状態、”ゾーン”に居続けるためにスロットマシーンをプレイするのです」

先の本はアメリカの研究事例なので日本とは少々事情が異なるが、日本でもこれと全く同じ現象がおきている。そう、パチンコである。
パチンコ屋で淡々と過ごしている人達は、ある意味では現代ギャンブルにおける最先端ランナーである。彼らは傍からみる分には黙々としているだけだが、その実はチベットの修行僧もビックリな程に深い深い集中状態に入り込んでいたのである。

誰もお金なんて目的にしていなかったのだ。皆が欲していたのは深い深い集中状態で、それにスゥッと入る為にお金を湯水の如くぶちこんでいたのである。

なるほどなあ、と思った。

キーワードは「ゾーン」なのだ。

現代のマシンギャンブルが提供するのは
「無」であって、お金じゃない。
マシンがプレーヤーを自動的に静かな
トランス状態に連れていってくれる。

いわば、俗世の嫌なことを全て忘れて
没頭するためにやっているのだ、と。

ここは、本当に
知っておいた方がいい視点だなあと。

スポーツや将棋なんかでゾーンに入ると、
素晴らしいと賞賛される。
受験生が勉強でゾーンに入ってたら、
たぶん親としては最高だ。

でもゾーンが誰にとっても
前向きな良いものなわけじゃない。

ギャンブルが生み出す”ゾーン”は弱い人の為の心の鎮痛薬だったのだ。

少なくとも生活保護をうけている人が昼からパチンコにいっているのを仮に目にしたとして、それを「ふざけるな」と怒るのは色々な意味で物凄く筋違いな怒りだという事だけは間違いない。
その行為を笑顔でニコニコ許容しなくてはいけないとまでは言わないが、難しい感情に囚われるぐらいには多角的な思慮をしたいものである。

多角的な思慮をしたい、と思った。

今日も良い1日を。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在19歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。