ただその子の幸せを祈ればいい

 

 

森の中のお遊び会。
大人と子どもで焚き火を囲んていた。

一人の男の子が長い枝を持ち上げる。
先端には火がついている。

途端にその子のお母さんが叱責した。

「あ、こらこら、危ないでしょ」

男の子はしぶしぶ、その枝を元に戻す――。

まあ、よくある光景だと思います。

でもこの解説が僕には
なかなかに衝撃的でした。

大して危ないことではありませんでした。ここでやめさせるのは「あなたは信用できない」という意味しかありません。大人の目が届いている場ですから、本当に危ないことになったら、そのときに止まればいいことです。
(中略)
先回りしての注意、アドバイスが多い人は、大きな不安を抱えて生きている人たちです。いつも、こういうことにならないように、あんなことにならないようにと、予防措置を撮り続けています。そうするうちに、子どもが判断力を失ってしまうのです。

 

著者の古山明男さんは30年以上、
不登校の子どもたちの居場所確保、
活動保障、制度的支援に
たずさわってきた方で、
子どもを脅さない、ご褒美で釣らない
「無償罰教育」を研究、開発しています。

この33番目の知恵、

「先回りしないで失敗させよう」

の冒頭のエピソードは、まさにこの本の
エッセンスを凝縮しているかのような
話だと思いました。

「あなたは信用できない」

本当にそんな隠れたメッセージが多すぎる。
それが今の教育の課題じゃないでしょうか?

誹謗中傷しかできない人たちは、自分の本音が尊重された体験がないのです。「誹謗中傷してはいけない」という規則で取り締まっても、匿名でやるだけです。規則と叱責だけでは、解決になりません。生徒を一人前の大人として尊重する中学・高校が必要なのです。

こんなハッとさせられるような深い話が、
とても平易な言葉で
すらすら書いてあります。

「子どもにとって理解者がいることが、なによりも力になるのです」

と帯のコピーにあるように、
あくまでも、どこまでも
子どもに寄り添う姿勢の徹底が説かれます。

  • 不登校の理由は、解決した頃になってわかる
  • 見えない氷の壁に閉じ込められた子どもたち
  • 「親離れできていない」ではない
  • 「休みグセ」ではない
  • 頭脳のギアチェンジがある

など、特に第1章は子どもの不登校が
理解できない保護者に、そして
第2章と第3章はすべての
教育に関係する人たちに
ぜひ読んでもらいたい内容でした。

響いた箇所はあまたあれど、

「あなたを見捨ててないよ」

のこの一節が個人的にはとても沁みました。

もし話ができる関係であったら、こう伝えるといいです。
「ゲームをしていていいんだよ、あなたは、そのままでいいんだよ」
表現の仕方はいろいろあるでしょう。その親子間で生まれる表現がいいです。とにかくあるがままを肯定する言葉を掛けます。
もし声を掛けることも難しい関係であったら、背中から祈ってあげるといいです。「ああなるように、こうなるように」と祈るのではなく、ただその子の幸せを祈ればいいです。何かしら、流れが変わってくるものです。

ただその子の幸せを祈ればいい。
そうしていれば何かしら流れは変わる。

本当にその通りだと思いませんか?

今日も良い1日を。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ。 息子は小学三年生の時に不登校になり、小・中学校には通うことなく卒業しました(現在20歳・大学生)。 不登校や親子関係の悩みについて、セミナーや講座をお届けする「びーんずネット」の事務局を担当しています。趣味はマラソン。不登校をテーマにしたインタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』や各種書籍の出版をしています。